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建築の著作権を俯瞰する:建築特集2

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 世間では、著作権に関する話題が活発に議論されているのに、建築家といわれる人々は、著作権にあまり関心を示さないのはなぜでしょうか。
 門外漢の人間からは、このような印象を受けます。

 2回目となる今回は、なぜこのような状況になったか考察しながら、建築の著作権について解説します。

 

Ⅰ もともと建築物には著作権はなかった!

 建築物の著作権の意識が希薄になった理由としては、以下の2点が影響していると予想されます。

 1.建築物は特別なケースを除き、依頼人(建築主)が注文することで初めて制作されるので、建築家が独自に、自由に発想した建築物はあまり作られない。

 2.一般的に建築物は量産されるものではなく、“一品もの”が多い。したがって実体が存在している以上、建築家の主張が建築物に表現されているといえるので、あえて権利を主張する必要がないと考えられている。

 過去を振り返ってみましょう。
 明治期は近代国家を目指しながら西洋の文化や制度を移植・吸収した時代。
 洋館を模倣した建築物が多く、国もそれを奨励していました。
 そして、明治32(1900)年に成立した(旧)著作権法第4章附則52条に「本法ハ建築物ニ適用セズ」※1と明記されている通り、著作権で「建築物」は除外されていました。

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引用 ※1
国立公文書館・アジア歴史資料センター 公開資料より引用 法律第39号 著作権法 明治32年3月3日 原本(国立公文書館アジア歴史資料センター)
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 おぼえ
 • 旧著作権法では「本法ハ建築物ニ適用セズ」と明記されていた
  →建築物の著作権は、過去には軽視されていた
 

 著作権立法を起草作成した水野錬太郎博士は、その理由を以下のように述べています。

「我國ニ於テハ從來建築物ヲ保護セル慣習ナキノミナラス建築物ヲ模擬シテ建築家ノ利益ヲ害シタルノ實例ナク又今日ニ於テ之ヲ保護セサル可カラサル必要ナク却テ外國ノ建築物ヲ利用スルノ必要アルヲ以テ本法は建築物ニ適用セサルコトヽセリ」※2

 つまり、当時の日本には建築物の著作権を保護する習慣がなく、模倣したことで実害も起きていない上、何より海外の建築物を模倣する必要があったため、著作権の適用外となりました。

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引用 ※2
『著作權法要義』 内務省参事官 法学士 水野錬太郎著 P164-165(有斐閣書房 明法堂)1899年(国立公文書館近代デジタルライブラリー)

 おぼえ
 • 過去には、建築物を模倣したことで実害も起きていない上、 海外の建築物を
  模倣する必要があった

次に、建築業界の著作権意識について掘り下げます。

 

Ⅱ 著作権の意識が低い? 建築業界

 明治43(1910)年に著作権法が改正され、「建築」の著作権が認められましたが、これは建築物の“意匠”、つまり芸術的価値を持つ建築物の権利を指しているといわれています。
 このように、著作権法上の「建築」の定義は建築物そのものを指していますが、建築のプロセスには、図面など著作権で保護されるべき、さまざまな要素があります。
 この点では、旧著作権法も「建築物の図書」等は、その第1条に示される通り「図画」として著作権の対象になると明記しています。
 特に、建築の著作権は、「著作者すなわち建築家・設計者の芸術・技術的な権利」の保護をうたうには、歴史的背景や複雑な産業構造が災いしたのでしょう。
 このため、今に至るまで、多くの建築家・設計者の著作権に対する意識が低いままなのではないかと予想されます。

 おぼえ
 • 建築のプロセスには、図面など著作権で保護されるべき、さまざまな要素がある
 • 歴史的背景や複雑な産業構造が災いしてか、今に至るまで、多くの
  建築家・設計者の著作権に対する意識が低いまま
 

 それでは、なぜ著作権を主張したほうがよいのか。建築家の意見を聞いてみましょう。

 

Ⅲ 著作権の主張が責任につながる

 建築家の吉田研介氏が自身の著書『建築家への道』で以下のように述べています。
「自分が考えて、自分がマネージメントして、自分が手を添えてやったわけですから、それは誇りに思っていいですよね。(中略)それだけ責任と社会性を併合している」
。 ※3

 このように考える建築家の方が多いのでしょうが、昨今の建築図書の虚偽記載や、欠陥構造設計等建築設計といった問題は、建築家を目指したときの初心に戻れば起きないことと思えてきます。

 設計図書等の著作権を主張することは、自己の権利の保有だけでなく、責任を表明することにつながり、市民への信頼につながることではないでしょうか。
 今の時代、建築家らは、著作権の重要性を再確認し、積極的にその促進に取り組むべきでしょう。

引用 ※3
『建築家への道』吉田研介 P83 TOTO出版 2001年

 おぼえ
 • 建築物は責任と社会性を併合している。
 • 設計図書等の著作権を主張することは、責任を表明すること。
 

 次に、現状の問題点とその解決法を探ります。

 

Ⅳ 建築業界ではいまだ無断複製が横行

 著作権を無視するのは、権利を受ける側にとっても死活問題といえます。
 最近、著作権関連の最大の問題は“複製”です。 CDやDVDなどで海賊版と呼ばれる違法コ ピーが外国で流通しており、現在国家レベルで対策に取り組んでいるところです。
 建築業界では、建築設計図面のCAD化、材料の切り出しの自動化などがコンピュータに依存しています。
 そのため、図面の無断複製が横行し、大きな問題となっています。
 設計者がアイデアを出し、作図して、出力するなどのプロセスを経て完成した、苦心の結晶といえる設計図書を、一瞬で複製して利用するという行為は断じて許されないでしょう。
 利用者は著作者に対して、図書の利用に際し了解を求め、対価を支払う形で正当に利用するというルールを業界内で築くことが必要ではないでしょうか。
 そういった意味でも、著作者は自ら著作物の権利を保有していることを宣言しなければなりません。
 そのためには、音楽業界におけるJASRAC(日本音楽著作権協会)のように、建築設計図書・建築ソフトウェアの著作権を管理できる仕組みを構築するのが望まれるのではないでしょうか。

 おぼえ
 • 建築業界では図面の無断複製が横行 →苦労の結晶を複製するのは許されない
 • 利用者は図書を正当に利用するというルールを業界内で築く
 • 今後、建築設計図書・建築ソフトウェアの著作権を管理できる仕組みを
  構築するのが望ましい
 

 第2回のまとめ

 • 旧著作権法では「本法ハ建築物ニ適用セズ」と明記されていた
  →建築物の著作権は、過去には軽視されていた
 • 過去には、建築物を模倣したことで実害も起きていない上、海外の建築物を
  模倣する必要があった
 • 建築のプロセスには、図面など著作権で保護されるべき、さまざまな要素がある
 • 歴史的背景や複雑な産業構造が災いしてか、今に至るまで、多くの建築家・
  設計者の著作権に対する意識が低いまま
 • 建築物は責任と社会性を併合している
 • 設計図書等の著作権を主張することは、責任を表明すること
 • 建築業界では図面の無断複製が横行→苦労の結晶を複製するのは許されない
 • 利用者は図書を正当に利用するというルールを業界内で築く
 • 今後、建築設計図書・建築ソフトウェアの著作権を管理できる仕組みを
  構築するのが望ましい

次は、テーマを掘り下げ、「設計図書の著作物性」をテーマに解説します。

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