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著作物とは

 著作権の対象となるもののことを、「著作物」といいます。著作物とは、著作権法の規定では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文学、学術、美術、又は音楽の範囲に属するもの」 と定義されています (著作権法(以下、「法」といいます。)2条1項1号)。

1 「思想又は感情」を表現したものであること
 単なるデータを羅列したようなものは、人の思想や感情を表現したものではないので著作物ではありません。たとえば、メニューや料金表、証券類などは著作物ではありません。

2 思想・感情を「創作的」に表現したものであること
 誰が表現しても同じようになるものや、ごくありふれた表現は創作性がないので著作物ではありません。例えば、天気の情報だけを簡潔に記載した天気予報や、歴史的事実のみを羅列した文章などは著作物ではありません。

3 思想・感情を創作的に「表現したもの」であること
 単なるアイデアは、「表現したもの」ではないので著作物ではありません。例えば、「逆さ富士」といった絵の着想・アイデアや、「ジブリ風」などの画風・作風などは著作物ではありません。

4 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であること
 産業の範囲に属するもの、例えば、大量生産される食器のデザインなどは著作物ではありません。もっともこれは、意匠権の対象にはなり得ます。プログラムが著作物になるか否かについては、かつて議論の分かれるところでしたが、現在は著作物に含まれると法律で明示されています。

 なお、著作権法では、以下のように、著作物の種類を例示しています(法10条)。

法10条に挙げられた例具体例
小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
音楽の著作物音曲および歌詞を伴う音曲
舞踊・無音劇の著作物日本舞踊、バレエ、ダンス等の舞踊、パントタイムの振り付け
絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物漫画、書、美術工芸品
建築の著作物建造物(設計図は図形の著作物)
地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物建造物の設計図
映画の著作物劇場用映画、テレビ映画、ビデオ作品、ゲーム
写真の著作物
プログラムの著作物

 著作物は、映画の著作物を除き、何らかの記録媒体に記録されている(これを「固定」といいます。)必要はありません。つまり、著作物とは、人々の頭の中に浮かぶ「表現そのもの」であって、「それが固定された記録媒体」のことではないのです。もう少しわかりやすく言うと、例えば「音楽の著作物」とは、その曲が録音されたCDのことではなく、人々の頭の中に浮かぶ「メロディそのもの」なのです。これが、著作権が「知的」財産権と称される所以です。ですから、例えば小室哲哉さんの楽曲のCDを買ったとしても、その曲の著作権を小室哲哉さんから買ったことにはなりません。

 ほかにも、以下のような特殊な著作物があります。

[二次的著作物]
 小説や音楽といった原著作物を、翻訳や編曲、映画化・漫画化したりしたものです。

[編集著作物とデータベースの著作物]
 百科事典、新聞、雑誌のような編集物は部品として収録されているひとつひとつの著作物の他に、その全体が「編集著作物」という著作物になります。
 また、情報の選択又は体系的な構成に創作性があるデータベースも著作物となります。

[共同著作物]
 複数の人が共同して創作した創作物で、各人が担当した部分を分離して別々に利用できないものが、共同著作物です。この場合、原則として、全員の一致で、その権利を行使するものとされています。

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